2020年度AIRプログラム(主催事業)について_Vision for AIR Programmes in 2020

ActivityNews 2020年9月2日

*イメージ画像は朝日デジタルフォトギャラリーからの拝借です。
http://www.asahi.com/gallery/astro-wakata/wakata11.html

English follows Japanese.

【2020年度のAIRプログラム(主催事業)方向性】1

2020年2月に新型コロナウィルス感染拡大が始まり、それ以来、なんだか宇宙ステーションで暮らしているような日々です。さて、今年度もさっぽろ天神山アートスタジオの、AISプランニング(文化庁支援)での自主事業として複数のAIRプログラムを実施します。以下、これらコロナ以前に考えた方向の転換、さらにパンデミックに突入した現在、この方向性が叶うのかどうか、だけど、目指して取り掛かりたいと考えています。

ほんとのところ実感は持てないのだが、多様性を期待する時代のムードを受けて、アーティストの活動は多岐にわたり、近年、アーティスト・イン・レジデンス(以下、AIR)そのものも、事業形態、運営方法が多様に国内外で展開している。

文化庁の支援を受け、過去2年に国内のAIR運営者、AIR事業を始めようとする人たちを対象にしたAIR勉強会を開催し、意見を交わし、参加者と国内外のAIR状況を眺めてみると、「AIRは多様だ」と実感せざるを得ない。多様さゆえに、だれにでも(どこにでも)効く特効薬はないから、よい運営を目指すと自ずと迷いが生まれる。運営者の悩みはつきないのである。だから、ある活動をさして、AIRか否かというジャッヂは到底ばかげている(そしてだれもそのようなジャッヂを求めていない)。とはいえ、AIRに期待し、AIRに行こうとするアーティストにとって、「AIRだからこそことさら期待されるなにか」が必ずあるだろう。体験的にその条件は、「(アーティストが)アーティストとして迎えられ、失敗がゆるされる場と機会、実験を許容する場と機会」であるような気がしている。確かに、私たちもまたそのような私たちであり続けたいと願っている。

 

私たちは、北海道、札幌を拠点にアーティストが一時的に滞在する場と機会を札幌市の施設を利用し、運営を引き受けながらアーティストに提供している。この施設がAIR拠点となったのは、2014年夏に開催された「札幌国際芸術祭(以下、SIAF)」がきっかけである。そこでふと考えるのだが「作品の完成、その作品による展覧会開催」をゴールにした滞在制作型のプロジェクト(展覧会事業)と、AIRは似て非なる営みであり、やっぱり区別したほうがよいと。運良く、2020年度冬季には3回目となるSIAF2020がおこる。2このタイミングを利用し、AIRに参加するアーティストと共犯者となって、SIAF2020と対比させながらAIRAIRらしく実現してみようとするのが今年度の目的である。このアイデアは、私たちの6年間で出会ってともに生活・活動をした多くのアーティストとの対話、アーティストとの実験的なプロジェクトを経験してうかんできた。そのために、7年目の私たちは効率がよさそうな慣れ親しんだやり方をひとつづつやめてみる選択をする。

【事業予算を伴うAIRプログラム】

2020年度のAIR事業全体を通して、<文化搾取><解釈と表現の自由><アーティストの移動と移動に伴うネットワーク>と<希望>をベースに、招聘アーティストごとに活動内容を計画する。

20206-7月にかけて札幌市文化部との協議の結果、札幌市との共催で実施する「国際公募による海外拠点アーティストの招聘」は、日本への渡航を含まず、主催者と招聘アーティストはリモートによってAIRプログラムを試行することを決定した。「交換プログラム(韓国・台湾)」および「再招聘アーティストによる成果発表」は、渡航制限、感染予防のための自粛状況を鑑み、渡航と伴う招聘が実現するかどうかは、202010月をめどに決定することとなった。

 

  • 継続的に連携を行っている交換プログラムのパートナー(台湾/韓国)ごとに最適なペースを見つけ、交換プログラムを通じた共有可能なゴールをみつける。

 

 【台湾・台東地域との交換プログラム】

 ー 先住民の存在が色濃い地域同士の交流をできるだけ長く続けるために、アーティストの招聘は一年おきに相互に実施する。

 ー 先住民と土地をテーマにお互いの場所とアーティストの力を発掘していく。

 

 【韓国・光州地域との交換プログラム】

 ー 双方にユネスコ創造都市ネットワークのメディアアーツ部門の認証都市であること、「中心」とは異なる歴史観をもっていることなどの共通項を意識したプロジェクトベースの交換プログラムを継続的に実施する。

 ー 脱中心、地球規模の環境をテーマにする。

 

  • 安価で時短が可能で利便性の高い「フライト」の利用を促進せず、別の方法で北海道・札幌にアーティストがくる方法を開拓し推奨する(国際公募、同時期滞在日本)。

*2020年度国際公募AIRプログラム応募要項(日本語)

 ー 一昨年あたりからアーティストから移動手段の固定化について、環境への配慮も含め招聘側に柔軟性を求める要望する意見がではじめたこと、また私たちも地球環境について考慮していく中で今一度「移動方法」について別の手段を試してみるタイミングではないかと考えた。

 

 ー さらに、2018年度、2019年度の2回に渡り招聘したアーティストとの対話、プロジェクト運営の共同作業を通じて得られたのが「移動」を新たなプロジェクトにすることである。AIRが、こと日本においては「一時的に滞在する場所とアーティストの関係」「その場所においてアーティストがなにをするか」にプログラムのフォーカスが当てられることが特徴づけられる。この点は、日本のAIRの特性としてプログラム運営上で丹念に注視すべきであるが、その視点とは別に、AIRのもうひとつの要素であり、アーティストにとってはAIRに参加する際に必ず伴う「移動」に対するプログラム比重を高める試み。

 

 ー これまでのAIRプログラム運営では、AIRと地域との関係を掘り下げてきた。多くのアーティストが真摯に地域と向き合い質の高いプロジェクトを実現してきたのだが、そのひとつひとつの営みをシビアに振り返るとき「文化搾取」に触れていないだろうかと不安になることもある。そこにはアーティストによる「解釈と表現の自由」も絡み、この2点のバランスをどう整え、長くキープできるかは運営者の経験的感覚による配慮と技術によるところが大きいと感じている。アーティストと場所との関係構築にあたり、運営者の脅威とストレスになり得るのが、「アーティストがすっときて、あっさりいなくなる」ことだったり、「一般には難しいコミュニティや地域文化情報へのアクセスが専門人材の介在によってインスタント化されすぎてはいないか」という疑念である。この自問自答に対し、「滞在」から「移動」に視点を移し替えることでこれまでAIRの現実的条件の中で最善と考えてきたフォーマットの見なおしをするチャンスになると考える。

 

 ー アーティストが活動拠点から、北海道・札幌まで「移動」する導線上に存在する国内外のAIR運営者を開拓し、アーティストの移動に対し、協働してサポートするチャレンジをしたい。(国内の複数のAIR団体と連携してアーティストが国内滞在中に複数箇所に滞在するチャレンジは、MOVE ARTS JAPANアーティスト・イン・レジデンスで挑戦と経験済みであり、ここの経験も踏まえ、2020年度は国際レベルに広げてみようというものである)

 

  • アーティストの作品を完成させるという成果を事業運営者のペースに収めるのではなく、発表できる作品の完成をアーティストごとに見極め、その機会を提供する(過去に滞在制作を行ったアーティストの再招聘)。

 

 ー 私たちの運営するさっぽろ天神山アートスタジオでは過去6年間に、複数回、短中期の滞在を繰り返しながらより完成度の高いプロジェクトや作品の発表を実現するアーティストが複数現れた。この経験から、単年度でアーティストの作品制作過程のすべてを詰めこむのは果たしてアーティストに対するサポートといえるのかと常々感じている。上記でも述べたように、アーティストがある場所との関係からプロジェクト・作品を生み出すときに必要な時間はやはり十分にあったほうがよいと考えている。

 

  • 上記、3つの方向性に対しそれぞれにAIRプログラムを企画するが、必ず国内のアーティストとの交流(共同生活と対話)をおこす。

 

 ー 海外を拠点にする招聘アーティストにとって、滞在場所での活動の支えと刺激になるのが日本拠点のアーティストの存在である。日本拠点アーティストは、ガイドになり海外拠点アーティストの活動全般の精度と密度を高める。また、すでに複数の事例がおこっているが、プログラムにおける「同僚」は、近い将来の新たな国内外のプロジェクトへと展開することから、同時期に滞在する、交流する日本拠点のアーティストに対しても、有効なしくみとして機能している。

 

  • すべてのアーティストの活動で、仔細な記録を残し、同時にアーティストの活動と社会を接続する役割をディレクター、コーディネーターが担う。

 

 ー 紙・印刷ベースの記録を制作することが文化芸術事業のアーカイブ基本作業として重要なことは理解するものの、やはり多忙を極めるAIR運営現場においてはエクストラな仕事になりスタッフの労働環境を圧迫しているのは事実である。補助金を活動資金として充てながら、補助金がなくても作業可能な状況の整備を目指してデジタル・アーカイブの手法を試し、AIR現場にあった記録と保存と活用の実践を行いたい。3

2020.08.31更新

文責:小田井真美 (さっぽろ天神山アートスタジオAIRディレクター)

以下、脚注:

1 本原稿は文化庁の補助金申請のために20201月中旬頃、パンデミック前に作成した内容に一部更新や追記をしたものである。

2 20207月にSAIF2020開催中止が発表された。
https://siaf.jp/siaf2020/about/

3 「アートとリサーチセンター」ウエブサイトで、北海道を生活と制作活動拠点にしていないアーティスト(Non-Hokkaido artists)の滞在中の活動記録をデータベース化し、可視化した上で、第三者が資料として活用できる情報にすること、北海道美術史の一端として認識されることを目指す。https://aarc.jp/

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Vision for AIR Programmes of Tenjinyama in 2020

August 2020  Mami Odai, AIR Director at Sapporo Tenjinyama Art Studio

Background 1

         Diversity is becoming among the emerging key concepts for different AIR programmes. It is so not only in regard to the overall system of AIR but also to the administration and management of each programme. Although it hasn’t come much as an actuality to me, such situation can be seen both domestically and internationally, driven by a range of artistic practice expanding in response to the current social climate.

         Looking back last two years of discussions from AIR study group meetings, held with support from the Agency for Cultural Affairs of Japan, we’ve exchanged our opinion with numbers of domestic AIR organizers and prospective AIR business owners. Ideas shared at those discussions, all through, support this exact perspective that AIR programmes come in great variety today. At this point, however, we have to clarify whether it might be good or bad, diversity can force us to give up on such thing as one ultimate right when running facilities. It leaves us with countless questions. Consequently, no one’s ever capable of or even asks for, the judgement on whether the certain practice should be qualified to be called an AIR programme or not. Another thing is that AIR is under specific expectations of the artists who are planning their prospective AIR experience. They strive for it because they see something irreplaceable in it. If you ask me, that something should be translated as space and opportunity where artists are treated as their professional selves, while essentially allowed to make errors and experiment. The offset of such expectation illustrates our ongoing and yet awaiting duty as AIR planners.

         We run the Sapporo Tenjinyama Art Studio, as a provider for artists of space and opportunity for temporary stay, and also as a municipal facility. The original purpose of the facility was not AIR, but it ended up so in the wake of the first Sapporo International Art Festival (SIAF) in summer 2014. Given that, this idea hit my mind that we ought to redefine the blurred line between AIR programmes and packaged residency programmes that’s product-oriented or exhibition-oriented. Considering that SIAF is coming back for the third time this winter 2, there’s no better time around than winter 2020 to realize the AIR programme at its distinctive nature. Our plan here, is to make partners in crime with our residents in our journey of figuring out the identity of AIR in contrast to the festival. And this makes the objective of our AIR programmes for 2020-2021. The outline of such proposition was derived from six years of conversations and experimental projects with artists whom we’ve shared fragments of our everyday life and creative process with. To achieve the proposition, in our seventh year around, here’s what we’ve decided to do -We quit the familiar course of action built for efficiency, one by one.

 

Budgeted Programmes

         With forthcoming International Open Call, organizers and invited artists work remotely throughout the programme. Travel to/from Japan will not be a part of the scheme. The method of procedure will be in an experimental phase. It is a co-operational programme with Sapporo City and the details were determined after discussions with the City Bureau through June and July. As for the exchange programmes with Taitung County and Gwangju, as well as presentations by re-invited artists, we have not decided yet if the invitation involves travelling. The decision will be made in October 2020, given the situation of international travel restrictions and general restraints regarding COVID-19.

 

Directions

  1. We discover the sharable goals with global partners through exchange programmes. Along the way, we examine the appropriate rhythm of implementation with each collaborator in consideration of different histories of association.

 

                   Exchange programme with Taitung County, Taiwan

  • The annual call will be conducted in turns for potential long-term association. The abiding cultural exchange is intended here recognizing the impenetrable presence of indigenous people in both Sapporo and Taitung.
  • With the theme Indigenous Peoples and Soil, the programme is set to unearth the location of both parties, on top of the artist’s faculty.

                   Exchange programme with Gwangju, Korea

  • The continuous, project-based exchange programme will be conducted in accordance with UNESCO’s Creative Cities status in the field of Media Arts given to both parties. The programme will be built based on further commonalities between Sapporo and Gwangju, including historical perspective of citizens that’s divergent of centralized point of view.
  • Projects will be themed in Decentralization and Global Environment.

 

  1. We explore alternative ways of transportation to flights, encouraging artists to make it to Sapporo, Hokkaido via other methods -because we know how rapid, practical, and budget-friendly air transportations can be. (Applied to International Open Call and Domestic Open Call)

 

  • For the couple of years, demands for flexibility in methods of travel had been rising among artists. Finding great harmonies between such demands and our concern for the global environment, we have decided to reconsider air transportations and explore alternative ways of travelling.
  • The crucial inspiration came from conversations and cooperation with an artist. Together with this artist, who had been invited for both of our 2018 and 2019 programmes as a project team member, we came up with this concept of developing the idea of travel into our new project. Besides, one critical aspect of AIR programmes in Japan must be that they profoundly investigate relationships between artists and the region their temporary studios belong to, as well as what they do on site. While we find it imperative to monitor where such perspective would go, we also are determined to let the programme lean towards another, immutable aspect of AIR experience, which is the journey itself.

 

  • Looking back our past AIR programmes, we have explored deeper into the relationships between AIR and local areas. Despite quality projects artists have realized, with great sincerity to the region, I have to admit with my most judgmental self, that this idea of possible cultural exploitation haunts me from time to time. There, the artist’s freedom of interpretation and expression must also be considered to the evaluation. I believe it is the organizer’s skill and deliberation from experience that could balance two sides of such conflict, and keep it balanced for a certain duration. Besides, it is often a case for organizers to find it stressful or threatening to the cultivation of the relationship with locals, when the strictly preserved local information becomes accessible too easily because of professional support, or when the artist leaves the community in the manner that’s too neat and effortless. Taking such perspectives into account, I believe with this approach, we can evaluate the course of action we’ve considered is the best among achievable possibilities.
  • Cooperating with domestic/international AIR facilities on the artist’s way from their location to Sapporo, the project will be supported collectively. Although it surely is an experimental attempt, we have a precedent model for domestic cooperation of MOVE ARTS JAPAN Artist in Residence programme. For 2020, our plan is to take a step further by expanding the area of association to a global scale.

 

 

  1. We offer the exhibition opportunity that’s process-oriented and artist-oriented – because the completion of one work/project should not be defined by the organizer but the artist. (Applied to the presentation by re-invited artists)

 

  • Tenjinyama Art Studio in the last six years involved several artists with multiple times of stays, short to medium terms, polishing up the quality of their work every time. These artists and their hard work suggest that the actual support for the artist may look different from organizing a dedicated yet one-time-only exhibition. Furthermore, the necessity of the duration sufficient for the artist to generate works/projects in association with the certain area also must be noted.

 

  1. On top of those three aims in direction, we arrange exchanges between invited artists and domestic artists by setting up communal living environment and rooms for conversations.

 

  • For invited artists who live and work overseas, local artists in Japan become great inspirations and sources of peer pressure. They occasionally help invited artists with their local researches and push them into another level of overall creation. Also, we must mention that every so often, the colleagues both parties find in each other through AIR programmes later turn into international collaborations. This proves such an arrangement can work beneficial for domestic artists as well.

 

  1. We have directors and coordinators compose detailed documents of all participating artists. Directors and coordinators also play such a role as connecting the practice of the artists and society.

 

  • While understanding the importance of the printed form of documents, it is undeniable fact that such style of recording requires extra efforts from project staff, often already dealing with other critical tasks in hands. Moreover, while we’ve allocated the budget from support from Agency for Cultural Affairs of Japan this time, we believe documentation work should be conducted throughout the programme with or without such financial support. With that taken into consideration, and also in the aim of developing the practical way of archive, preservation, and utilization for work environment of AIR in general, digital archiving will be the method we are trying out with our 2020 programmes 3.

 

 

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  1. This statement was originally composed in mid-January of 2020, as part of the application for a grant by the Agency for Cultural Affairs of Japan. Partial modification and additional notes are added for this version.
  2. Cancellation of Sapporo International Art Festival 2020 was announced in July 2020.  https://siaf.jp/siaf2020/about/
  3. Our plan is to turn the document of works and processes by non-Hokkaido artists into a part of our database on ‘Art and Research Center’, making it visible and utilizable for the third party, as well as making it visible as a fragment of Hokkaido’s local art history. *Website for Art and Research Center: https://aarc.jp/