[Archive]2020 Annual Report 潘逸舟 / Ishu Han

Archive-annual report 2021年5月1日

WS情報追記・変更_ 潘 逸舟 展覧会とワークショップ go to homehttps://tenjinyamastudio.jp/hanishuexhibition.html

潘逸舟 インタビュー / Han Ishu Interview, 2020年度再招聘プログラム 2021/2/27
https://www.youtube.com/watch?v=Ewd3YPAxiRc

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[プログラムリポート] 再招聘成果発表 展覧会とワークショップ go to home (文化庁:なかなかたどりつかないけど)https://tmblr.co/Zc70HdZybFDXCi00
作成:坂口千秋

潘 逸舟

展覧会とワークショップ go to home

2021年2月26日(金)27日(土)28日(日)12:00-17:00

会場:モエレ沼公園 ガラスのピラミッド スペース1

2016年の冬季AIRプログラムの招聘アーティスト、潘逸舟が5年ぶりに天神山のプログラムに参加。今回はモエレ沼公園を会場に、映像作品の展示とワークショップを行い、さらに新作の制作にも挑んだ。

2016年の滞在時、潘は札幌から後志、根室などを訪ねて、冬の北海道の風土を体験した。その体験をもとに制作した《behind of someone》は、雪原の足跡を辿る5人の人影が、ワイドなスクリーンをゆっくりトラバースしていく、音のないモノクロの世界の映像作品だ。今回は、この作品の再展示に加えて、5年前、根室近辺で眼にした雪原の動物の足跡を追う映像を、ガラスのピラミッドの構造体に取り付けた小さなモニターで展示した。俯瞰する風景に歩く人の視線が加わることで、風景に意味を与える主体の存在がより意識されるようになった。時代によって作品の意味が変わることは度々あるが、潘はコロナ下の変化に反応し、作品タイトルを《behind of someone》から《tracing homes》へと変更した。誰かの後を追う視線からその足跡の先に眼を向けることで、人や生き物はどこから来てどこへ還るのか、という大きなテーマがより強く感じられるようになった。

ワークショップでは、モエレ沼公園の雪原で「足跡を辿って」歩く体験をした。スノーシューを履いて夕暮れの雪原を出発し、プレイマウンテンの山頂まで登る。それからポータブルなプロジェクターで狸の足跡を雪原に投影して、その足跡をたどって歩くというものだ。丸い大きな黄色い月が人工的な公園の雪原にゆっくりとのぼっていくその下で、生き物たちの「go to home」を思いながら、狸の足跡の幻影を一歩ずつ辿る様子は、森の木陰の不思議なダンスのようにも見えた。

ワークショップ後、今度は自身の新作の撮影を行った。プロジェクターを頭上にかかえて足跡を投影しながらモエレ山を登っていく潘をカメラマンが撮影した。大きな山のシルエットに小さなプロジェクターの灯りがどんどん小さくなっていく。風にのって潘の荒い息遣いが聞こえてくる。生々しい創作の過程には、目の前の風景に自身の身体を抛つことで「風景を社会化する」潘の作品の特徴がよく現れていた。久々の遠出をしたという5年ぶりの札幌で、短い滞在期間に潘は旧作をアップデートし、新作にも挑戦することができた。そして「I’ll be back!」と言い残して帰っていった。

「思考は経験によって変化する」と潘。この5年間でアーティストとして著しく成長した彼にとって、レジデンスとは、「他者の場所の中で自分をみつけていく行為」であり、また展覧会のためにつくるサイクルから逃れて、アーティストが新しいアイデアを思考し挑戦を重ねることのできる実験場でもある。やりたいことが山ほどある貪欲なアーティストたちは、きっと天神山へ戻ってくるだろう。ここが可能性の実験場であり、新しい風景と出会える場所である限り。

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tracing homes
潘 逸舟 Ishu Han

 

潘 逸舟は、2016年1-2月にさっぽろ天神山アートスタジオの冬季アーティスト・イン・レジデンスプログラムで招聘されました。札幌、後志、根室などを訪ね北海道の風土を体験しそれらの体験をもとに作品を2点制作しました。本展覧会では、だれかの足跡をたどってその上をまた歩いた2016年制作の作品をモエレ沼公園ガラスのピラミッドでサイトスペシフィックなインスタレーション作品としてふたたびたどりなおし、再構成した内容です。

日時:2021年2月26日(金)27日(土)28日(日)12:00-17:00

会場:モエレ沼公園 ガラスのピラミッド スペース1

主催:一般社団法人AISプランニング

支援:文化庁 令和2年度「アーティスト・イン・レジデンス活動支援を通じた国際文化交流促進事業」

企画・協力:さっぽろ天神山アートスタジオ

 

Date: 12:00-17:00, 2021/2/26-28

Place: Glass Pyramid, Moerenuma Park

Special thanks to: Hinano Ishikawa, Naoto Okawada, Ryotaro Kobayashi, Chiaki Sakaguchi, Akiko Fukuhara, Miyaji

Supervised by AIS Planning.

Supported by Agency of Cultural Affairs

Planned and cooperated by Sapporo Tenjinyama Art Studio

 

潘 逸舟 プロフィール

1987 上海生まれ、東京都在住。2012 東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。

主な展覧会に「アジア・アナーキー・アライアンス」(関渡美術館、台北、2014)、「Whose game is it?(ロイヤルカレッジオブアーツ、ロンドン、2015)、「In the Wake – Japanese Photographers Respond to 3/11(ボストン美術館、2015/ジャ パンソサエティー、NY2016)、「Sights and Sounds: Highlights(ユダヤ 博物館、NY2016)、個展「The Drifting Thinker(MoCA Pavilion 上海、2017)、「Cross Domain(金鶏湖美術館、蘇州、2018)、「Yet not to be attained(マサチューセッツ大学アマースト校、2018)、「アートセンターを ひらく」(水戸芸術館現代美術センター、2019)、「Thank You Memory – 醸造から創造へ(弘前れんが倉庫美術館、2020)などがある。 2020年に「日産アートアワード」グランプリ受賞。 ウエブサイト http://hanishu.com/

 

Artist Profile

Ishu Han was born in 1987 at Shanghai and he lives and works in Tokyo, Japan.

He received an MFA from Tokyo University of the Arts, majored in Intermedia Art.

He has participated in numerous group exhibitions, such as, “Asia Anarchy Alliance”, Kuandu Museum of Fine Arts, Taiwan (2014); “Whose game is it?”, Royal College of Art Gallery, London (2015) “In the Wake – Japanese Photographers Respond to 3/11”, Museum of Fine Arts, Boston (2015) / Japan Society, New York (2016); “Sights and Sounds: Highlights”, Jewish Museum, New York (2016), “The Drifting Thinker”, MoCA Pavilion, Shanghai in 2017. “Cross Domain”, Jinji Lake Art Museum, Suzhou, China (2018),”Yet not to be attained”, University of Massachusetts Amherst, Amherst, U.S.A.(2018), “Thank You Memory: From Cider to Contemporary Art”, Hirosaki Museum of Contemporary Art, Aomori, and “Nissan Art Award 2020” Nissan Pavilion, Yokohama. Website: http://hanishu.com/