【レポート】オープンスタジオ/OPEN STUDIO 2026年の始まり編 vol.7
1月25日、2026年最初のオープンスタジオが開催されました。
前日の夜から歴史的な大豪雪。正直なところ、あまり人は来ないだろうと思っていましたが、予想に反して、たくさんの方が雪をかき分け、山を登って参加してくださいました。感謝です。
盛りだくさんの内容を、これからご紹介します!
⓪アート&ブレックファストデイ
パン、ピザ、ピラフ、ザンギ、ケーキ、スープなど、みなさんの朝ごはんがテーブルを彩ります。
今回アーティストトークをしてくれたのはゾエティカ・エブ/Zoetica Ebbさんです。自身のこれまでの活動と現在進行中のプロジェクトを紹介してくださいました。
ゾエティカは自身のキャリアの最初は、ドローイング、のちにファッションやアクセサリーなど徐々にその活動の幅を広げていました。
ドローイングでは、展示空間の中で汚染、変異、成長の痕跡のようなものを、完成されていない表現として提示されます。
ファッションやアクセサリーでは、それらを身体と環境の間にある接触膜として捉え保護された展示空間を離れ、外的環境と触れながら変異していく「インターフェース」として表現ているそうです。
このような活動に理論的な枠組みの必要性を感じ出版したのが『Chimeric Herbarium(キメラ植物標本集)』です。異星に取り残された人間の宇宙飛行士が書いた日記のような内容で、それがのち地球で発見されたという設定になっています。異星において、「人間とは」という問いに直面する様相はまさに人間中心的であり、あえてそこを意図的に作り上げたそうです。
そして、札幌で進行しているプロジェクトが『クリプトバイオスフィア』は地球を観察する非人間的存在によって書かれた記録であり、人間中心的なテキストである『Chimeric Herbarium(キメラ植物標本集)』とはある意味対になるものとして位置付けているそうです。このプロジェクトは札幌を拠点に活動をおこなうケンジ・シラトリ/Kenji Shiratoriと共同で進めています。北海道の冬の「休眠・圧縮・持久」というような季節性とそれに抗うかのように行われる祭りについてリサーチを行っています。
少し、SFめいた話のようにも聞こえますが、彼女らは決して新しい世界・別の世界を論じるにとどまらず、むしろ現在の世界に耳を澄ませることを大事にしています。想像の世界の話を学術的な論文として発表するzoeticaさんの態度にそれは表れているように感じます。
館内にて論文・書籍が自由にご覧いただけますのでぜひ立ち寄った際は手に取って見てみてください!!
①ルピタ・レッジャーニ / Lupita Reggianiによるパフォーマンス
2月に展覧会を予定しているルピタ・レッジャーニがパフォーマンスを行いました。

パフォーマンスは一本の電話の呼び出し音から始まります。電話の向こう側から響く女性の声はスピーカーを通して空間全体に広がり、「この空間は美しいから、よく観察するように」と観客に促します。しかし、パフォーマーであるルピタはその呼びかけを唐突に断ち切るかのように電話を切ってしまいます。
その後、彼女は自身の日常について語り始めます。窓辺に座り、鳥たちを観察する穏やかな日々。ありふれた情景の描写は次第に鳥への過剰な執着へと変化していきます。「もし飛び立てなかった鳥がいたらどうなるのか?」という問いへと言葉は飛躍し、語りは徐々に現実の輪郭を逸脱し、嘆きへと変わっていきます。
親しみやすいものから不条理へ。
日常から強迫観念へ。
この移行のプロセスを通して、パフォーマンスは空間と時間、そして私たちが「いま・ここ」に存在しているという感覚そのものを問いかけます。
彼女の語りが徐々に混沌へと向かうのに並行して、音楽も次第に派手さを増していきます。音の強度が高まるにつれ、平穏だった日常は揺らぎ、安定していたはずの現在は不確かなものへと変質していきます。
平穏な日常が混乱に変化した時に、いまここに対する存在に揺らぎを感じる、そんなパフォーマンスでした。
②佐々木あおい/Aoi Sasakiによるパフォーマンス『人新世を生きるhuman animalsにとってのrefugiaにおける〈灯台〉とは何か?』
約20年前に二風谷へ移住し、これから北海道内の中で移住する転換期のタイミングに天神山に滞在し活動を行う佐々木さんがピアノの演奏と映像、絵画から成るパフォーマンスと鹿肉カレーを振る舞ってくれました。

人々が繋がるためにための場所をRefugiaにおける灯台というメタファーを用い、パフォーマンスを行いました。
即興的なピアノのパフォーマンスの隣で佐々木さんが撮影した映像を組み合わせたパフォーマンスに参加者の皆さまは「心が安らぐ時間になった」という感想。
その後、佐々木さんが知り合いの方からもらった鹿肉を使った温かいカレーを皆さんで食べながら、感想を話したりなど緩やかな時間を共有できました。
アイヌ民族の方々と共に活動を行う中で、人と人のつながり、人と自然とのつながりについて多くの思考をしてきた佐々木さんが生み出したその状況こそが、「Refugiaにおける灯台」となり、つながりを育む時間となりました。

佐々木さんも自身の拠点を変える転換期にこのような時間を設けられ、いのちや表現を支えてくれたすべての人に感謝をする機会になったことがよかったとのこと。

3月には札幌市内で個展の開催の予定。佐々木さんの情報のチェックをお見逃しなく!!
③ユー・チャン / Yu Zhang によるワークショップ『Back to the Future #1 — ひとつのごみ、ひとつの物語』
ユー・チャン / Yu Zhangさんは滞在中にワークショップを複数回行い、その成果を最終的に展示へつなげるプロジェクト『Back to the Future』を行っています。

第1回目のワークショップがこの日行われました。
プロジェクトの概要についてはこちら:https://tenjinyamastudio.jp/yu-zhang-backtothefuture.html
「物はいつ“ごみ”になるの? そして、その瞬間は何によって決まるの?」を参加者のみなさんで考えました。

次回のオープンスタジオでは、「音」を通して廃棄物にかかわる
ワークショップを行います。情報の更新をお見逃しなく!
④デーモン・インクテイルズ / Demon Inktales によるワークショップ『イラストを使ったステッカーづくり』
滞在中に小説の出版に向けて活動を行うDemon Inktalesさんが、自身のイラストを家庭でもできる簡単なやりかたでステッカーにするワークショップを行いました。
やり方はとてもシンプルです。
まず、デーモンさんが用意した可愛らしいデザインを紙に写し取り、それぞれが好きな色で自由に彩色します。次に、トレーシングペーパーの上にテープを貼り、その上に色を塗った紙を重ね、最後にもう一度テープを貼れば完成です。特別な道具を使わず、身近な材料でオリジナルステッカーが作れる手軽さも魅力でした。
参加した子どもたちからは「次は家で自分のイラストを使ってやってみたい」という声も聞かれ、今回の体験が創作の楽しさを知るきっかけになると嬉しいです~。
⑤小松菜々子による展覧会 『スパコイノイノーチ』とパフォーマンス
北海道に移住した小松さんの先祖の記憶を探るため、昨年度から定期的に滞在しリサーチを行ってきた小松さんが、その報告展として展覧会とパフォーマンスを行いました。

展覧会自体は同月18日~オープンスタジオ当日まで公開制作という形で行われました。会場は数日前のWSで染められた布辺が、暖簾のように複数吊るされているのがまず目に飛び込みます。中央には木のブロックが据えられており、それらを取り囲むようにプラレールの線路が巡らされていました。ほかにも泥炭から顔をのぞかせる恐竜のおもちゃ、小松さんが集めた資料、中央の壁に貼られた北海道の白地図には、小松さんがこれまで道内を巡って来た道程が記されていました。また、小松さんの神戸での活動の映像や、リサーチ中に撮影された映像も常時流れていました。

小松さんのリサーチは、北海道のお祭りの調査からはじまり、小松さんの祖父が遺された自叙伝にまつわるもの、泥炭という土地の素材など多岐に渡ります。それらが展示空間全体に散りばめられており、小松さんのリサーチの様子をうかがい知れるものとなっていました。
パフォーマンスの方は天神山アートスタジオ内をツアー形式でまわりながら、参加者がパフォーマンスや小松さんによって仕掛けられた様々な出来事を体験していくというもの。

各回30分、最大8名程度の定員で行われ、日本語ツアー2回、英語ツアー1回の計3回が実施されました。
ツアーガイドの後について天神山の二階へ向かうと、廊下や、小松さんの滞在している部屋、ランドリールームなどでパフォーマンスや仕掛けが待ち受けています。ランドリールームでは、小松さんとシンガーソングライターのHIKARIさんによるダンスと歌のパフォーマンスがあり圧巻。
最後は展示会場へ戻り、吊るされているおみくじを参加者全員でひきました。当たりのくじを引いた人のみがご近所の茶人、磯田さんの点てたお抹茶を飲めるという仕様になっています。くじにはずれた人もお抹茶ではないですが、お茶やお茶菓子をいただき、ツアーとパフォーマンスを振り返るひとときとなりました。
次回は2月22日に開催!! 情報の更新をお見逃しなく!